2023年10月3日火曜日

樹弦夢君のお話

今年の《ひとり琴》では、おなじみアトリエ響樹 加屋野木山さんの製作による、珍しい15分割鍵盤の楽器を弾かせていただくことにしました。
有名な音律「アーロンのミーントーン」の発表500年記念🎊が今回のテーマのひとつなので、それならばぜひ、よりミーントーンの世界に深く踏み入ることのできる楽器を使いたい、と。
そして、とても面白く複雑な楽器なので、事前にブログで説明を…と思っていたら、加屋野さんに(Facebookの投稿で)先を越されてしまった😅
楽器と音律のことを、これ以上正確に専門的に私が書けるわけがないので、許可をいただいて、核心部分を転載します!

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ミーントーンは、唸らない長三度、つまり純正な長三度を8個も内包した音律で、それゆえ黒鍵(♯キー)では異名異音が発生してしまう音律である。
例えば、ソ♯と調律したら、ラ♭としては使えない音になってしまう。
(音が出ない訳でなく、すごい音が出る。)
つまり黒鍵は、両隣のどちらかの音の♯か♭に、調律によって限定されてしまうのである。

なので、一般的な1オクターブ12分割の鍵盤では、曲の中でひとつの黒鍵に♯音♭音の両方が求められる場合、ミーントーンで調律するとオーマイガーな響きが生じる。

これを解決する為に作られたのが分割鍵盤で、黒鍵を前後に2分割して、♯音と♭音を曲の中で弾き分けることが可能になった。
分割鍵盤チェンバロはミーントーンの為の楽器、つまり現代の平均律には全く必要の無い装置でもある。


低音部の分割は、中高音域とは異なる音が出る。
これはショートオクターブと言って、演奏であまり使われない音を省き、パイプの節約に貢献した、オルガンからのアイデアである。
これにより低音部は、ミ♭レ♯ 及び ド♯レ♭の音は存在しない。

黒鍵の二階建て構造
ちなみに。
平均律以外の音律には全て主従関係があり、基本的に白鍵(♮キー)が主、黒鍵が従になる。
例えば、レ♯はシに寄り、ミ♭はソに寄るので、レ♯の方が音は低く、ミ♭の方が音は高くなる。

なんとなく♯の方が高くて♭が低いとイメージしてしまいがちだが、主である白鍵から長三度として寄ると、♯が低く、♭が高くなる。

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というわけで、私は今この楽器で、必死になってさらっているところです💦
いつもの指の場所の感覚で弾いて、すごい音が出て、ひぃぃっとなってます。
演奏中の(もはやアクロバティックな)手元を見ていただきたいような、お見せしてはいけないような、そんな気持ち。

実は今回のチラシ、この鍵盤を写真に撮り、万華鏡風にデザインしました✨
そんなの誰も気づかないよ…と言われたので、チケットには鍵盤写真をそのまま薄〜く載せました。。

全席自由 3,500円(学生2,500円) 於:Gallery 鶉(豊島区目白)

13時開演の方は、お席が少なくなってきました。
御予約をお待ちしております❗️ → 勾玉音℃ 📩 magatamary@gmail.com